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2018年6月2日

法律相談|夫の前妻と子どもへの養育費を減額してもらうには?

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「私は初婚で、夫はバツイチ再婚で結婚しました。夫には前妻との間に子どもが二人います。調停離婚をして月10万養育費を払っていました。
しかし、夫の手取り33万の給料だったのですが、離婚後諸事情により現在は23万です。そのため、生活が厳しく、養育費が不払いになってしまい、裁判所から履行勧告がきました。差し押さえになると家賃、光熱費を払うのも難しくなります…。それでも差し押さえされてしまうのですか。
私達には子どもが一人います。私は妊娠を機に退職しましたが、子どもがまだ小さいので、すぐには働きに出られません。 養育費を4万円ほど減額してもらいたいのですが、養育費を減額してもらうにはどうすれば良いですか? 夫が前妻に言ってみたけど、拒否されているそうです」

30代前半
まっちゃんさん



回答


まっちゃんさん、月23万円のお給料の中から10万円の養育費の支払いは大変ですね。でも一方で、10万円の養育費で子ども二人を育てている前妻にも、何か事情があるのかもしれません。
いずれにせよ、法律的に考えれば、一度調停できちんと合意した養育費を変えるにはそれなりの手続が必要になります

●話し合いで養育費の減額ができなかった場合は、調停の申し立てが必要

夫と前妻が話し合って減額の合意ができたのであれば、きちんと書面を作成し、あとあとトラブルにならないようにしておきましょう。



しかし、今回のご相談のように減額の合意ができなかったときは、減額を希望する夫が、養育費の減額を求めて家庭裁判所に「調停の申し立て」をする必要があります。中立な第三者である裁判所の調停委員や裁判官を入れて、話し合いをするのです。

申し立てにあたっては、戸籍謄本と以前養育費を決めた調停での調停調書、申立人である夫の現在の源泉徴収票、もしくは課税証明など提出することになります。
また、申し立て先は、相手方である前妻の住所地にある家庭裁判所になります。

申立書は裁判所のサイトに載っていますので、ダウンロードして必要事項を記入し、2部作成して資料を付けて提出すればよいのです。
費用は、印紙代が1200円と、切手が1000円くらい(東京の場合)です。
わからなければ、家庭裁判所の家事相談の窓口に相談しましょう。

●調停で減額できなければ、審判になる

調停で話し合っても前妻が減額に同意してくれないときには、調停手続は終了し、自動的に裁判官が養育費の額を決める「審判」という手続になります。

裁判官が養育費の額を決めるにあたっては、いわゆる「算定表」といわれている夫と前妻の収入を元にした基準や、これまで払われてきた養育費の額、双方の生活内容などを考慮します。前妻が離婚した後に収入が増えているなど、何か状況に変化があれば、養育費の金額もそれなりに変わってきます。

ただし、減額された新しい養育費額に変更されるのは、通常は調停で新しい金額の合意や審判が出た後からになります

●養育費の差し押さえ金額は、給料の2分の1まで

新しい養育費が決まるまでの間に、どうしても養育費が支払えなくなり、未払いがたまった場合、前妻が以前の調停調書に基づいた養育費の支払いを求めて夫の給料の差し押えをしてくる可能性があります。
養育費の場合には、夫が受け取る給料の額の2分の1までは差し押えができるのですが、上限まで差し押さえられてしまったら残りの金額ではあなたたちご家族3人の生活が厳しいですよね。



そのときには、差し押えの通知をしてきた裁判所に対して、差し押えをする範囲を小さくしてもらう手続きをすることも考えましょう

いずれにしろ、当事者で話し合いがつかなかった場合には、調停を申し立てるしかありませんので、できる限り早く裁判所に行くことをおすすめします。


★回答:金澄道子(カナズミ ミチコ)
弁護士。学生時代、ひどい差別に直面した女性が裁判を通して少しずつ社会を変えていった歴史を知り、弁護士の仕事に興味を持つ。1992年に弁護士に登録して以降、離婚・相続をはじめとした家族の事件やDV被害者の支援などを行っている。1999年、虎ノ門に事務所を開設。

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