カラダ
2018年3月11日

大きくなった子宮筋腫を手術で取る予定。子宮も取ったほうが良い?

子宮の病気

婦人科・性感染症

お悩み


「子宮筋腫が子宮と同じくらいの大きさになりました。手術で筋腫を取るつもりですが、貧血の症状改善のために『子宮も取ったほうが良い』と言われています。貧血の症状は、今は薬等で落ち着いているのですが…」

40代
神ちゃんさん



回答


主治医から説明があったと思いますが、子宮筋腫への対応には大きく分けて次の4つがあります。

(1)放置、経過観察

何もしないで様子を見る。年に1回くらいエコーで状態を観察する程度。

(2)薬物療法

気になる症状(出血、頻尿、腹部膨満など)を薬で抑える。

(3)筋腫核出

子宮は残して筋腫だけ取り出す。

(4)子宮全摘

筋腫と一緒に子宮も全部取ってしまう。

これらのうちのどれを選ぶか、あるいはどれは選べないかは、筋腫の状態、自覚される症状の程度、本人の希望などによって変わってきます。自覚症状がひどければ放置はできないでしょう。症状を薬だけでは抑えられないかもしれません。筋腫の大きさや場所によっては、筋腫だけ取ることはできず、子宮全体を取らざるを得ない場合もあります

神ちゃんさんの具体的な状況がわからないと、確実な答えはできませんが、貧血の症状が落ち着いていること、貧血以外に特に気になる症状がないのなら、あえて手術をしないで(2)の対応を選んでも良いです。逆に、貧血以外にもいろんな症状があるから筋腫は取りたいということであれば、(3)か(4)の対応になります。

ただ、主治医から子宮全摘を勧められているということは、神ちゃんさんの状況では筋腫だけ取って子宮を残すのは難しいと判断されているのでしょう。この状況では、神ちゃんさんの希望が選択を大きく左右します。

子宮を取ることにさほどの未練がないのなら、主治医の勧めに従って子宮全摘すれば良いのです。
しかし、「子宮を取るなんてとんでもない!」ということであれば、下記の対応を選択できます。

(1)主治医にもう一度、どうしても筋腫核出をしてほしいと頼む。


(2)主治医がそれを断ったら別の婦人科を受診する。医師によって判断が違うことがあるため、別の婦人科なら筋腫核出に応じる可能性がある。


(3)それもだめな場合は、筋腫は残して薬で対応を続ける。


私が想像するには、神ちゃんさん自身が判断に迷っておられるのでしょう。「子宮を全部取ったらどんな不都合が起こるのかよくわからないので心配」「子宮全摘のメリットとデメリットをちゃんと理解してから決めたい」というところではないでしょうか?

ということで、子宮全摘のメリットとデメリットを説明します。
まず、デメリットから先にお伝えしましょう。
今後、妊娠出産を希望しているなら、子宮を取るとその希望が断ち切られてしまう決定的なデメリットがあります。これはすぐにわかるでしょう
では、もう子どもを産むことはないと思っている人にはどうでしょうか。実は、子宮全摘において身体的なデメリットはごくわずかです

子宮が女性ホルモンを分泌していると誤解して、「子宮を取ると女性ホルモンがなくなる、更年期障害になる」と心配する人がいますが、これは間違いです。子宮を取っても卵巣が残っていれば、女性ホルモンはちゃんと分泌されます。もっとも、術者が下手だと卵巣に行く血管(子宮のそばを通っている)を傷付けて、卵巣の機能に障害を起こすことがあります。その場合でも、ホルモン補充療法という対応策があります。

また、子宮全摘では、子宮と膣の接合部分を切り取って縫い合わせるので、膣がわずかに浅くなります。しかし、膣は柔軟性に富んでいるのでやがて元に戻りますし、縫合部の痛みもじきに治ります。子宮全摘の身体的デメリットは、これくらいです。

ただし、このほかに「精神的」ともいうべきデメリットがあります。
「子宮は女の象徴」という通念があります。思い込みの強さは人それぞれですが、この思い込みがとても強いと、子宮を取ると自分が女でなくなったと落ち込んでしまうかもしれません。周りにそう思い込んでいる人がいる場合、「子宮を取っちゃったの! 女じゃなくなったじゃない」などと余計な言葉で本人を傷付けることもあります。これこそが、子宮全摘の最大のデメリットかもしれません。逆に、そんな思い込みがなければ、このデメリットも小さなものでしょう

次に、子宮全摘のメリットをお伝えします。
まず、子宮筋腫による症状が解消します。そのためにこそ、神ちゃんさんはこの手術を考慮しているのですね。
また、妊娠を望んでいないのなら、最も確実な避妊法になります
子宮のがん、つまり子宮頸がんと子宮体がんの心配もなくなります。2013年の統計では、子宮頸がんと子宮体がん合わせて、およそ年間2万4000人が罹患し、およそ300人が死亡しています。この不安がなくなるのは大きなメリットでしょう。

これらのメリットとデメリットをよく考えた上で、手術を受けるか受けないか、神ちゃんさん自身で判断してください。


★回答:
婦人科・心療内科医。