ココロ
2012年8月22日

人の顔を覚えるのが苦手!!


「こんにちは。私はコンビニの店員をしているのですが、記憶力が低く、特にお客様の顔を覚えることができません。
『一見様』には感じ良く接客することができるのですが、『常連様』のことを判別することができません。
私の中では、お客様を大切に思っていないわけでは決してありません。

ですが先日、お客様をちゃんと覚えていないことが原因で、クレームを発生させてしまいました。
その結果、『対応に心が無い』とお叱りを受けてしまい、近くにいた先輩が深々頭を下げて場をおさめてくださいました。

これまでも、"お客様を覚えなさい""ちゃんと一人一人の方に関心を払いなさい"と、オーナーや上司に何度も言われ、どうして人を覚えられないのかと不思議がられながらも、「一生懸命やっている」「心がこもっている」ということで何とか認めていただいてきました。
しかし今回のクレームで「心が無い」とまで言われてしまい、もう自分に何も無いようでショックでした。

また、『お客様のことが見えていない』という自分の欠けた部分が露骨になるものでした。
店員としても人としても、本当に恥ずかしい事だと思っています…。最近は職場の人にも"顔を認識できない"="人に関心がない・覚える気がない"と受け止められていることがあり、仕方ない事だとも思いますが悲しいです。
いろんな方にアドバイスをいただいていますが治らず、本当に悩んでいます。
何かの脳や意識の問題などがあるのでしょうか? 日頃、練習したり訓練できることなどありましたら、どうか教えてください。よろしくお願いします。」

20代後半
くろ02さん


くろ02さん、こんにちは。常連のお客様の顔を覚えられないことで悩んでいるのですね。
お客様に言われた「対応に心がない」という言葉に、とても傷つき、悲しい想いをされたことでしょうね。
ご相談から、くろ02さんがいい加減に仕事をしている訳では決してなく、お仕事に一生懸命取り組んでいらっしゃって、仕事への熱い想いがあるだけに、より一層、「顔を覚えられない」ことで、思うように行かないとても悔しくもどかしい気持ちを感じていらっしゃるのではないかと思いました。

さて、「顔を覚えられない」ということについてですが、他の人の顔を覚えていられる程度は人によって違っていて、得意な人もいれば苦手な人もいるのが普通です。
一度見たらすぐに覚えられる人もいれば、数回会っても覚えられない人もいます。けれど、顔に対する認識能力が一般的な水準からはかけ離れている、「相貌失認(そうぼうしつにん)」と呼ばれる病気があることをご存じでしょうか。つまり、記憶力や気持ちの問題ではなくて、脳の機能の問題として「顔が覚えられない」ということがあるのです。

相貌失認の原因は、はっきりとは分かっていないのですが、脳の視覚情報の処理が何らかの原因でうまくできない可能性などが考えられています。
私たちが他人を一人の人間の顔として識別するには目、鼻、口といった顔の部分別の認識だけでなく、それらを全体として認識し、かなり複雑な脳内の処理が必要となります。ですが、相貌失認ではパーツは認識できても、全体として認識ができないのです。
その結果、「人の顔が覚えられない」「人間の顔の区別がつかない」「男女の区別がつかない」「表情がわからない」といった症状が出てきます。
日常的には、映画や映画などを見ていてもストーリーについていけなかったり、ついさっき会ったばかりの人でも、
服装や場所が変わると分からなくなってしまうといったことがおきます。

相貌失認はあまり知られていませんが、発症は2%程度といわれていますから、100人のうち2人は経験していることになるので、実際にはそれほど珍しい症状ではないようです。
ただし、相貌失認には重度のものから、ごく親しい人は識別できるなど、日常生活にはあまり支障のない軽度のものまで差異があるようです。さらに、発症している人でも、顔ではなく声や服装、髪型、体格など様々な情報を手がかりにして個人を認識することで、日常生活に問題を感じないために、自覚がない人も多くいます。
また相貌失認は、遺伝の影響も考えられていますので、ご両親にも似たような悩みを持ったことはないか尋ねてみると良いと思います。

けれど残念ながら、相貌失認の専門家が多くいるわけではありませんし、治療法も確立されてはいないようです。
ですから、もしも相貌失認であると診断されたとしても、やはり他人を覚えるには「声のトーン」「雰囲気」「髪型」「服装」といった手がかりで、個人を認識する練習などをしていく必要はあると思います
ただ、もしもあなたが相貌失認であることが判明すれば、ご自分でそれを認識し、周囲の人にもそれを伝えることで、「顔を覚えられない」ことから来るトラブルや誤解、苦しさが軽減することもあるのではないかと思います。ですから・・・・・